ストアが成長して2つ目の倉庫や店舗を構えると、いよいよ複数ロケーション運用への移行を考える時期がやってきます。とはいえ、これまで1つのロケーションだけで回してきた在庫を、いきなり分けて運用するのは少し不安なものです。途中で在庫が二重に見えたり、逆に足りなく見えたりして、欠品やオーバーセルが起きないか心配になります。
この記事では、単一ロケーションから複数ロケーションへ安全に移行する道筋を、順を追ってご紹介します。何が変わるのかを押さえ、既存のオンハンド在庫をどう分割し、Googleシートをどう作り替え、同期をどう再マッピングするか。そして移行中にオーバーセルの隙間を作らないコツまでをまとめます。
複数ロケーションになると何が変わるのか
まず前提として、Shopifyのロケーションとは在庫を保管・出荷・販売する場所のことです。単一ロケーションのときは、在庫はその1か所にまとまっていて、販売可能数も1つの数字でした。複数ロケーションにすると、在庫は各ロケーションごとに別々の状態(販売可能、引当済み、オンハンド)として記録されます。同じSKUでも倉庫Aと店舗Bでは数が別々に動き、販売可能数もロケーションごとに変わります。
大事なポイントは、商品はあるロケーションに在庫を置くよう設定して初めて、そこに数量を割り当てられるという点です。新しいロケーションを追加しただけでは在庫はゼロのままで、移行とは「どの商品を、どのロケーションに、何個置くか」を決めて反映していく作業だと考えると分かりやすいです。注文が入ると、Shopifyは在庫のあるロケーションから出荷・引当を行います。
既存のオンハンド在庫を分割する
移行の中心は、今1か所にあるオンハンド在庫を、新しいロケーションへどう振り分けるかです。まずは新しいロケーションを追加し、対象の商品をそのロケーションでも在庫管理するよう設定します。この設定をしないと、そのロケーションには数量を入力できません。次に、各SKUの合計在庫を実態に合わせて分けていきます。
- 01現在のオンハンド在庫を、移行前のスナップショットとして書き出しておく
- 02新しいロケーションを追加し、対象商品をそのロケーションで在庫管理する設定にする
- 03SKUごとに、合計在庫を各ロケーションへ実数で割り振る(合計が元の数と一致するか確認)
- 04棚卸しや実地の数が分かるものは、推測ではなく実数で入力する
- 05割り振り後、各ロケーションのオンハンド合計が移行前のスナップショットと合うか突き合わせる
ここで一番避けたいのは、元の数量をそのまま両方のロケーションにコピーしてしまうことです。たとえば100個を倉庫Aに100、店舗Bにも100と入れると、見かけ上は200個に増えてしまい、オーバーセルの原因になります。あくまで「合計100個を、どう分けるか」であって、増やすわけではない点を意識してください。
Googleシートを1列から複数列へ作り替える
Googleシートを在庫の管理元にしている場合、これまでは「数量」という1つの列で足りていたはずです。複数ロケーションでは、この1列を、ロケーションごとの列に作り替えます。たとえば「倉庫A数量」「店舗B数量」のように列を分け、各SKUの行にそれぞれのオンハンド数を入れていく形です。
列レイアウトの作り方
おすすめは、1行=1SKUのまま、ロケーションごとに数量列を横へ増やすレイアウトです。SKUの列は据え置き、右側に「倉庫A」「店舗B」という見出しの数量列を並べます。元の「数量」列はすぐ消さず、しばらく残して合計の検算用に使うと安心です。各行で「倉庫A+店舗B」が元の合計と一致しているかを確かめてから、古い列を片付けましょう。
- SKU列はそのまま残し、識別子は変えない
- ロケーションごとに数量列を1つずつ追加し、見出しを分かりやすくする
- 元の合計列を残し、各ロケーション列の合計と突き合わせて検算する
- 空欄は0として扱うか、明示的に0を入力して曖昧さをなくす
同期を再マッピングし、接続テストで確認する
シートが複数列になったら、同期の設定もそれに合わせて作り替えます。在庫同期アプリのSync Masterは複数ロケーションに対応し、Googleシートを在庫の単一の真実として、各列の数量を対応するShopifyロケーションのオンハンドへ書き込めます。移行時は、「どの列を、どのロケーションに対応させるか」を改めてマッピングし直すのがポイントです。
ここで本番同期をいきなり走らせる前に、接続テストを使いましょう。接続テストでは、列とロケーションの対応が正しいかを、実際に在庫を書き換える前に確認できます。倉庫Aの列が本当に倉庫Aのロケーションを指しているか、店舗Bの列が店舗Bを指しているかを、事前にチェックできるわけです。ここで取り違えに気づければ、誤った数量がShopifyに反映される事故を防げます。
テストで問題がなければ、いよいよ最初の本番同期です。同期後は、いくつかのSKUを抜き取り、各ロケーションのオンハンドがシートの値と一致しているかをShopifyの管理画面で確かめましょう。問題がなければ、スケジュール同期を設定して、以後はシートを更新するだけで各ロケーションの在庫が自動でそろう運用に移れます。
移行中のオーバーセルの隙間を作らない
移行で見落としやすいのが、作業の途中に生まれる「隙間」です。たとえばシートを複数列に直したのに同期がまだ旧設定のまま、という状態だと、Shopify側の在庫が一時的にずれてしまいます。これを避けるには、シートの作り替え、マッピングの更新、接続テスト、本番同期という順序を崩さず、ひとまとまりで一気に終わらせるのが基本です。
心配な場合は、移行作業のあいだだけ自動同期を一時停止し、シートとマッピングが完全に整ってから手動で初回同期を走らせる方法も有効です。こうすれば、中途半端な数字がShopifyに流れ込むことを防げます。移行が終わって数字の一致を確認できたら、スケジュール同期を再開しましょう。単一から複数への移行は一度きりの作業ですが、ここを丁寧にやっておくと、その後の複数ロケーション運用がずっと安定します。