複数の倉庫や店舗を持つと、「どこに何個あるのか」を全体で把握するのが急に難しくなります。Shopifyの管理画面でも在庫はロケーション単位で見られますが、商品が増えると一覧性が落ち、低在庫がどのロケーションで起きているのかを横断的に見るのは骨が折れます。
そこで今回は、データ入力ではなくレポート側に焦点を当てます。Googleシートの在庫マスターから、ロケーション別のオンハンド在庫を可視化し、低在庫や在庫の偏りを発見するレポートの作り方を、ピボットや関数を使って順番にご紹介します。
ロケーション別在庫を一目で見るレポートの作り方
まず前提として、Shopifyのロケーションとは在庫を保管・出荷・販売する場所のことです。在庫は各ロケーションごとに状態(販売可能、引当済み、オンハンドなど)として記録され、同じSKUでも倉庫Aと店舗Bでは数が別々に動きます。レポートの目的は、この別々の数を一枚の表に並べ直し、全体の様子を素早くつかめるようにすることです。
理想のレイアウトは「行にSKU、列にロケーション、セルにオンハンド数」というマトリクスです。一番右に合計列、一番下に合計行を置けば、SKUごとの総在庫と、ロケーションごとの総在庫が同時に読めます。在庫マスターのシートが1行=1SKU、列にロケーション別数量という形なら、そのままレポートの土台になります。逆に、すでに1行=1ロケーションという縦長の形でデータを持っている場合でも、次に紹介するピボットを使えば、同じマトリクスへ簡単に組み替えられます。どちらの持ち方でも、最終的に目指す見た目は同じだと考えておくと迷いません。
ピボットでSKU×ロケーションを集計する
在庫マスターが「1行に1つのロケーション分」という縦持ちの形(SKU・ロケーション名・数量の3列)なら、ピボットテーブルが最も手早い集計手段です。行にSKU、列にロケーション名、値にオンハンド数量の合計を指定するだけで、SKU×ロケーションのマトリクスが自動で出来上がります。元データが増えても、範囲を広げて更新すれば反映されます。
- 01在庫マスターの範囲を選び、メニューから「ピボットテーブルを挿入」を選ぶ
- 02行にSKU(または商品名)を置く
- 03列にロケーション名を置く
- 04値にオンハンド数量を置き、集計方法を「合計(SUM)」にする
- 05必要なら値をもう一つ追加して、合計と公開在庫を並べて見る
合計在庫と公開在庫を分けて見る
レポートで混同しやすいのが「合計(オンハンド)」と「公開在庫(販売可能数)」の違いです。オンハンドは実際に倉庫にある数、公開在庫はそこから引当済みやバッファを差し引いた販売可能な数です。両者を別々の列として並べると、「実在庫はあるのに販売可能数が少ない」ロケーションが見えてきます。これは引当が多いか、バッファをかけすぎているサインかもしれません。
ロケーション別の在庫切れ・低在庫アラート
マトリクスができたら、次は注意すべきセルを目立たせます。Googleシートの条件付き書式を使い、「オンハンドが0なら赤」「しきい値以下なら黄色」と色分けすれば、どのロケーションのどのSKUが危ないかが一目で分かります。しきい値はロケーションごとに変えても構いません。出荷の速い倉庫は高め、ゆっくり動く店舗は低めに設定すると実態に合います。
- オンハンドが0のセルを赤で塗り、在庫切れを即座に把握する
- しきい値以下(例 : 5個未満)を黄色にして、補充候補を浮かび上がらせる
- 別表にCOUNTIFで「在庫切れSKU数」をロケーションごとに集計する
- FILTER関数で「低在庫のSKUとロケーションの一覧」を自動抽出する
色分けだけでなく、低在庫の行だけを抜き出したリストもあると便利です。FILTER関数で「オンハンドがしきい値未満の行」を別の場所に自動抽出しておけば、補充担当者はその一覧を上から処理していくだけで済みます。ロケーション名も一緒に出すのを忘れないでください。さらに、その抽出リストを公開在庫の少ない順に並べ替えておくと、どこから手を付ければよいかが自然と上から決まり、毎朝の確認がルーティン化しやすくなります。
在庫偏在を発見する指標
複数ロケーションでありがちなのが「在庫の偏り」です。総数は足りているのに、一方の倉庫に偏っていて、注文の多いロケーションが品切れる——こうした偏在は、合計だけ見ていると気づけません。SKUごとに「最大ロケーション在庫」と「最小ロケーション在庫」の差を出したり、特定ロケーションのシェア(そのSKUの総在庫に占める割合)を計算したりすると、偏りが数字で見えてきます。
たとえば「あるSKUの9割が倉庫Aにあり、よく売れる店舗Bはほぼ空」という状態は、移送や補充を検討すべきサインです。レポートにこうした偏在指標の列を一つ足しておくだけで、棚卸しや発注の優先順位づけがぐっと楽になります。難しい数式は不要で、MAX・MIN・SUMの組み合わせで十分です。
レポートを定期更新する仕組み
レポートは作って終わりではなく、最新の在庫を映し続けてこそ価値が出ます。ピボットや関数で組んだレポートは、元の在庫マスターが新しくなれば自動で再計算されます。問題は、その在庫マスター自体をどう最新に保つかです。
在庫同期アプリのSync Masterは複数ロケーションに対応し、Googleシートを在庫の単一の真実として、各Shopifyロケーションのオンハンド数量を自動で書き込めます。スケジュール同期を設定しておけば、シート上の数字とShopify側の在庫が定期的に揃うため、シートから作ったレポートも実態とずれにくくなります。本番同期の前には接続テストで列とロケーションの対応を確認できるので、レポートが参照している列が正しいロケーションを指しているかも事前にチェックできます。
ロケーション別の在庫レポートは、特別なツールがなくてもGoogleシートのピボットと条件付き書式だけで十分に作れます。まずは在庫切れの色分けと合計列から始め、慣れてきたら偏在指標を足していく。可視化が進むほど、どこを補充し、どこから移すべきかの判断が速くなり、欠品とオーバーセルの両方を減らせるはずです。