「在庫が0でも注文は受けたい」というバックオーダー(取り寄せ販売)は、人気商品を切らさずに売り続けるための便利な仕組みです。ところが倉庫や店舗が複数あると、話は急に複雑になります。どのロケーションが在庫切れ販売を許可していて、入ってきた取り寄せ注文を実際にどこが引き受けるのか——ここがあいまいだと、納期も在庫数もすぐに破綻してしまいます。
今回は、複数ロケーションを前提にバックオーダーを扱うときの考え方を整理します。Shopifyでは在庫はロケーション単位で管理され、同じ商品でも各ロケーションの「販売可能数」は別々に動きます。だからこそ、在庫切れ販売の許可も、取り寄せ分の引き受けも、ロケーション単位で意図的に設計しておくことが大切です。
ロケーション別に在庫切れ販売を許可する判断
Shopifyでは、商品ごとに「在庫がなくても販売を続ける」設定を選べます。ただしこの設定は商品(バリエーション)単位の挙動で、在庫自体はロケーションごとに数えられます。つまり「在庫切れでも売る」と決めたとき、その注文を最終的にどのロケーションがさばくのかまで意識しないと、取り寄せ分がどこに溜まっているのか分からなくなります。
そこでまず、どのロケーションでバックオーダーを許すかを決めましょう。すべてのロケーションで在庫切れ販売を許すのではなく、補充の見通しが立つ拠点だけに絞るのが現実的です。次のような観点で振り分けると整理しやすくなります。
- 中央倉庫 : 仕入れルートが安定しているので取り寄せを引き受けやすい
- 店舗ロケーション : その場で渡せない取り寄せは混乱のもと、原則は実在庫のみで販売
- ドロップシップ/サプライヤー拠点 : 供給元の在庫が読めるなら取り寄せ向き
- ポップアップ・期間限定拠点 : 取り寄せは受けず、実在庫だけで完結させるのが安全
どの倉庫がバックオーダーを引き受けるか
バックオーダーで難しいのは、「在庫切れでも売る」という許可と、「その注文を実際にどこが出荷するか」が別物だという点です。Shopifyは注文をロケーションへ割り当ててフルフィルメントしますが、在庫が0のロケーションに割り当てられた取り寄せ注文は、入荷を待つ「未出荷の引当」として残ります。引き受け先がはっきりしていないと、複数の倉庫にまたがって取り寄せが宙ぶらりんになりがちです。
おすすめは、取り寄せを引き受ける「バックオーダー専用ロケーション」を1つ決めておくことです。在庫切れ販売を許すのはそのロケーションに集約し、他のロケーションは実在庫の範囲だけで売る。こうすると、取り寄せ分はすべて1か所に集まり、入荷したらそこから順に出荷すればよい、というシンプルな流れになります。
取り寄せ分の在庫数をマイナスで持つか
引き受け先を決めたら、その取り寄せ分をシート上でどう表すかを考えます。やり方は大きく2つ。1つは、引き受けロケーションの在庫数をあえてマイナスで持ち、「マイナス3=3個の取り寄せを抱えている」と読む方法です。もう1つは、在庫数は0で止め、取り寄せ件数を別の列で管理する方法です。後者のほうが事故は少なく、ゼロ化の運用とも相性が良いので、多くの店舗には別列管理をおすすめします。
入荷予定をシートに織り込む
バックオーダーを安全に回す鍵は、入荷予定をマスターであるGoogleシートに見える形で持っておくことです。取り寄せをただ受けるだけでなく、「いつ・どのロケーションに・何個入るか」を1つの表で管理できれば、納期の根拠が明確になります。次のような列構成にしておくと運用しやすくなります。
- 01A列 : SKU
- 02B列 : 引き受けロケーションの実在庫(0で止める)
- 03C列 : 取り寄せ受注数(バックオーダー件数)
- 04D列 : 入荷予定数 E列 : 入荷予定日
- 05F列 : 公開数量(実在庫+入荷予定 − 取り寄せ件数を関数で計算)
こうしておくと、入荷予定を見込んだうえで「あと何個まで取り寄せを受けられるか」を計算できます。入荷予定日が近い商品だけ販売を続け、遠い商品は止める、といった判断もシート上で完結します。在庫同期アプリのSync Masterは複数ロケーションに対応しているので、F列のような公開数量を、引き受けロケーションのオンハンド在庫としてそのまま書き込めます。
バックオーダーと自動ゼロ化のせめぎ合い
ここで注意したいのが、シートに載っていない商品を自動で0にする「ゼロ化」運用との衝突です。バックオーダー中の商品をうっかりシートから消したり、入荷予定の行を削ったりすると、せっかく受けた取り寄せ分の数量が0で上書きされ、販売が止まってしまいます。バックオーダー対象の行は、入荷が完了するまで消さないことを徹底しましょう。
本番同期の前には接続テストで列とロケーションの対応を確認できるので、F列の公開数量が「引き受けロケーション」に正しく向かっているかを、実際の書き込み前に一度目視しておくと安心です。引き受け先を間違えて他の倉庫へマイナスや取り寄せ分を送ってしまう事故を防げます。
顧客への納期表示を破綻させない
最後は、お客様への見せ方です。バックオーダーで一番こわいのは、買えてしまったのに「いつ届くか分からない」状態を放置することです。入荷予定日をシートで持っているなら、それを商品ページや注文確認のメッセージに反映し、「取り寄せ:◯月◯日ごろ発送予定」と具体的に伝えましょう。期日が遅れそうなら、早めに連絡するだけで信頼はぐっと守れます。
ロケーションごとのバックオーダーは、「どこが引き受けるか」を最初に1か所へ決め、入荷予定をシートで見える化し、ゼロ化と衝突させない——この3点を押さえるだけで、ぐっと扱いやすくなります。まずは主力商品の取り寄せを1つのロケーションに集約するところから始めてみてください。在庫切れの機会損失と、納期破綻の両方を減らす近道になります。