複数の倉庫を運用していると、必ず発生するのが拠点間の在庫移動と補充です。A倉庫からB倉庫へ商品をまとめて送ったり、メーカーからの入荷で特定のロケーションを補充したり。物理的な作業としては当たり前のことですが、ここにShopifyの同期が絡むと、思わぬ落とし穴があります。
この記事では、Google スプレッドシートをマスターにして複数ロケーションの在庫を回している方に向けて、移動と補充を同期と矛盾なく進めるための運用ルールを整理します。難しいAPIの話はありません。手順と習慣の話です。
倉庫間移動が同期と衝突する典型シナリオ
もっともよくある事故は、こうです。担当者がShopifyの管理画面で「A倉庫マイナス10、B倉庫プラス10」と在庫を直接動かしました。ところが翌朝、スケジュール同期が走ると、マスターシートにはまだ古い数字が入っているため、Shopify側の在庫がシートの値で上書きされ、移動がなかったことにされてしまいます。
シートをマスターにする運用では、Shopifyはあくまで「シートの内容が反映される先」です。つまりShopify上で直接行った変更は、シートを直さないかぎり、次の同期で必ず巻き戻されます。これは不具合ではなく、シングルソース運用の正しい挙動です。問題は、現場の感覚だと「Shopifyで動かしたから完了」と思い込みやすいことにあります。
「動かす前にシートを直す」を運用ルール化する
巻き戻し事故を根本からなくす方法はシンプルです。物理的に在庫を動かす前、あるいは動かすのと同時に、マスターシートの数字を先に更新する。これをチーム全員の鉄則にします。手順にすると次のようになります。
- 01移動・補充の内容を決める(どの商品を、どのロケーションから、どこへ、いくつ)
- 02マスターシートの該当ロケーションの数量を書き換える(送り元はマイナス、送り先はプラス)
- 03その状態で同期を実行、またはスケジュール同期を待つ
- 04Shopifyの各ロケーションの在庫がシートどおりになったことを確認する
- 05確認できてから、または並行して、実際の梱包・出荷・棚入れを進める
ポイントは、Shopifyの数字を手で触らないことです。シートを直して同期させれば、Shopify側は自動的に正しい数になります。二重に手を動かすと、どちらが正なのか分からなくなり、かえって事故のもとになります。Sync Master のようにシートをマスターとして複数ロケーションへ書き込めるアプリを使えば、シートの修正だけで送り元と送り先の両方を一度に整えられます。
移動中(在庫が宙に浮く)期間の扱い
拠点間移動でやっかいなのが、トラックの上にある「移動中」の期間です。送り元の棚からはもう消えているのに、送り先にはまだ届いていない。この数日間をどう扱うかを決めておかないと、在庫数が現実とずれます。
おすすめは、出荷した時点で送り元からマイナスし、送り先には「実際に棚入れした時点で」プラスする運用です。こうすれば、移動中の数量がうっかり二重に売れてしまう事故を防げます。販売に回したくない在庫を多めに抱えるなら、輸送中の数を一時的に差し引いた控えめな数量をシートに入れておくのも有効です。
Shopifyの移動機能とシート運用の住み分け
Shopifyにも在庫の移動を扱う機能があり、ロケーション間でどれだけ移すかを記録できます。便利な機能ですが、シートをマスターにしている運用では、これを主役にすると話がこじれます。なぜなら、Shopify上で移動を確定させても、シートの数字が古いままなら次の同期で結局上書きされるからです。
住み分けの考え方はこうです。在庫の正しい数を決めるのはシート、Shopifyの移動機能は「現場の作業記録」や「ピッキングの指示書」として使う。最終的な数量の整合は、必ずシート経由の同期で取る。こう割り切ると、二つの仕組みがケンカしなくなります。
- 在庫数の正解 : マスターシートが決める
- Shopifyの移動機能 : 作業の見える化・指示用として補助的に使う
- 整合のタイミング : シートを直してから同期、の一本に絞る
補充リードタイムを在庫数に織り込む
補充、つまりメーカーや別倉庫からの入荷には、必ずリードタイムがあります。発注したからといって、その瞬間に在庫が増えるわけではありません。ここを在庫数に正しく織り込まないと、まだ届いていない商品を売ってしまう「在庫の前借り」が起きます。
基本は、入荷予定はシートに反映しないことです。シートに載せる数量は、あくまで「いま手元にあって、すぐ出荷できる数」に保ちます。入荷予定日や数量は別の列やメモ欄で管理し、実際に棚に入った日に数量へ反映する。この一手間で、リードタイムによる売り越しはほぼ防げます。
移動ログを残して追跡可能にする
最後に、移動と補充は必ずログを残しましょう。いつ、誰が、どの商品を、どのロケーションからどこへ、いくつ動かしたか。シートに専用のログタブを一枚作るだけで十分です。数字が合わなくなったとき、このログがあれば原因をすぐ遡れます。
また、本番の在庫に書き込む前に、Sync Master の接続テストで列の対応づけを確かめておくと安心です。送り元と送り先のロケーションが正しい列にひも付いているかを事前に検証できれば、移動を入力したつもりが別ロケーションに反映される、といった取り違えを防げます。
倉庫間の移動と補充は、物理作業と同じくらい「シートをいつ直すか」が肝心です。動かす前にシートを直す、入荷はまだ数に入れない、移動はログに残す。この三つを習慣にするだけで、同期と現実のズレはぐっと減ります。まずは小さな移動から、この流れを試してみてください。
出典