「在庫同期は何分おきに走らせたらいいですか?」——これは私たちのところによく届く質問です。結論から言うと、業態によって正解が大きく違います。1分おきに同期すれば安心、というわけでもなく、逆に1日1回で十分なストアもあります。やみくもに頻度を上げると、Googleシートの操作中に同期が走って思わぬ上書きが起きたり、不要な処理でAPIの利用枠を消費したりと、デメリットも生じます。
この記事では、業態別に「ちょうどいい同期頻度」の目安を整理します。あくまで目安なので、最終的にはご自身のストアの状況に合わせて微調整してください。
「同期頻度」の決め方を分解する
頻度を決める時に考えるべき軸は、実はシンプルです。「在庫数が変動するスピード」と「ズレた時のリスクの大きさ」の2つを掛け合わせて考えると、ほとんどの場合は方針が決まります。
- 在庫数の変動が速い = 注文・出荷が頻繁に発生する
- ズレた時のリスクが大きい = 売り越し(オーバーセル)が顧客対応コストに直結する
- 両方が高いストアは、同期頻度を上げる方向に振る
- 片方が低いなら、頻度を抑えてシート側の使い勝手を優先
もう一つ、見落とされがちな観点があります。それは「シートを編集する時間帯」です。誰かがシートを開いて編集している最中に同期が走ると、書きかけの値が反映されてしまうリスクがあります。少なくとも、編集作業のピーク時間帯(営業時間内など)は、頻度を控えめにするか、編集中は手動同期に切り替える運用が安全です。
ECだけのストア
実店舗を持たず、Shopifyのオンライン販売だけで運営しているストアです。このタイプは、在庫の動きが「注文 → 出荷」の一方向に近く、外部から在庫が増えるのは仕入れ入荷の時だけです。比較的、頻度は控えめでも回ります。
取扱数が少ない場合 (〜500SKU)
商品数が500SKU以下のストアであれば、1日1〜2回の同期で十分なケースが多いです。たとえば「毎朝9時に1回、夕方17時に1回」という運用です。理由は、これくらいの規模だと、在庫の動きが目で見える範囲に収まることが多く、ズレが発生してもすぐ気づけるからです。むしろ頻度を上げすぎると、ピッキング中に同期が走って「あれ、さっきと数が違う」という混乱が起きやすくなります。
取扱数が多い場合 (500SKU〜)
商品数が増えてくると、ズレに気づく感度が落ちます。1000SKUを超えるストアは、1〜数時間に1回の自動同期に切り替えるのが目安です。Sync Masterの場合、定期実行で2時間おき、4時間おきといった頻度を設定できます。セール期間中など、注文が集中する時期だけ1時間おきに上げるなど、季節要因で微調整するのも有効です。
実店舗併設のストア
EC+実店舗(POS)のストアは、頻度を上げる必要性が一段階高くなります。実店舗で1点売れた瞬間にECにも反映されないと、「実店舗で売り切れた最後の1点をECでも誰かが買えてしまう」という売り越しが発生し得るからです。
目安としては、営業時間中は1時間おき、できれば30分おきの自動同期を組むのが理想です。とはいえ、Shopify POSを使っているなら、POSでの販売は自動的にShopifyの在庫から減算されますから、Googleシート側で管理する必要があるのは「補充」「棚卸」「仕入入荷」など、人が触る情報だけです。これらの情報の鮮度を保つために、ECと実店舗が同時稼働している時間帯は頻度を上げると安心できます。
卸も並行するストア
BtoCのShopifyに加えて、BtoBの卸売も別チャネルでやっているストアは、もう一段複雑になります。卸の大口注文が1件入ると、在庫が一気に減ることがあります。「100個まとめて出荷した瞬間、ECで残り3個と表示されているはずだったのが、実は在庫切れになっていた」というケースが起きやすいタイプです。
このタイプのストアは、卸の受注処理を行ったタイミングで「手動同期」を即座に走らせる運用と、定期同期(30分〜1時間)を併用するのがおすすめです。卸の受注はECほど頻発しませんから、起きた時に即同期、というイベント駆動の発想が効きます。
- 01卸の受注を確定したら、まずGoogleシートで在庫数を引く
- 02シート上で正しく引かれたか目視確認
- 03手動同期を走らせ、Shopify側にも反映
- 04数分後、ECページで在庫表示が正しく更新されているか確認
この4ステップを「卸の受注処理のお作法」として習慣化すると、ECと卸の在庫が乖離する事故が大きく減ります。
まとめ : 頻度よりも「タイミングの設計」
同期頻度の議論は、つい「何分おきにすべきか」という数字の話になりがちです。でも本当に大事なのは、「いつ・誰が・どんな目的で同期を走らせるか」というタイミングの設計です。自動同期は安心のための定期便、手動同期は重要なイベントの直後に走らせるブースター——という役割分担を意識すると、過剰な頻度に頼らずに済みます。
最初は控えめな頻度から始めて、運用しながら調整していくのが現実的です。「足りない」と感じたら上げればいいだけで、最初から最大頻度に設定する必要はありません。