複数の倉庫や店舗を持つお店で在庫同期を始めると、単一ロケーションのときには起きなかった種類のトラブルが急に増えます。数字そのものは正しいのに、「なぜか違う場所に反映される」「在庫があるはずなのに販売できない」といった、ロケーション特有のつまずきです。
この記事では、マルチロケーション同期でやりがちな失敗を、原因と回避策をセットでご紹介します。一般的なチェックリストではなく、実際に現場で起こりやすい具体的な落とし穴に絞っているので、思い当たる項目から順に潰していってください。
失敗1 : 違うロケーションに書き込んでしまう
もっとも多いのが、本来とは別のロケーションへ在庫を書き込んでしまう失敗です。Shopifyのロケーションとは在庫を保管・出荷・販売する場所のことで、同じSKUでも倉庫Aと店舗Bでは数が別々に管理されます。シート上の「倉庫A用の列」がShopify側の店舗Bに対応づいていると、数字は正しくても行き先が間違い、片方が過剰、もう片方が欠品という状態になります。
回避策はシンプルで、列とロケーションの対応づけを「名前」ではなく確実な紐づけで管理し、本番同期の前に必ず一度テストすることです。ロケーション名は似た表記が多く、目視だけでは取り違えやすいので、最初に正しい対応表を作って固定しておくと安心です。
失敗2 : ロケーションに在庫を持たせる前に数量を割り当てる
Shopifyでは、ある商品をそのロケーションで「在庫を保有する」状態にしてからでないと、そのロケーションに数量を割り当てられません。新しい倉庫を増やしたのに、商品側でそのロケーションを有効にし忘れていると、同期しようとしても数量が入らない、あるいはエラーになります。新商品の追加時や倉庫の新設時に起きやすい失敗です。
- 新しいロケーションを追加したら、対象商品でそのロケーションを在庫保有先として有効にする
- 新商品を登録したら、すべての必要なロケーションで在庫が持てる状態か確認する
- 同期で数量が入らないSKUは、まずロケーションの有効化漏れを疑う
- 一括編集を使い、対象ロケーションをまとめて有効化しておく
失敗3 : 在庫状態と数え方を取り違える
在庫はロケーションごとに状態(販売可能、引当済み、オンハンドなど)として記録されます。この区別を曖昧にしたまま同期すると、思わぬ過不足が生まれます。代表的なものを三つに分けて見ていきましょう。
引当済みとオンハンドを混同する
オンハンドは実際に倉庫にある数、販売可能数はそこから引当済み(注文済みでまだ出荷していない分)を差し引いた数です。シートでオンハンドを管理しているのに、Shopifyの販売可能数と直接見比べて「ズレている」と早合点すると、不要な調整をしてしまいます。同期するなら、シートとShopifyで同じ状態同士を突き合わせるのが基本です。多くのケースでは、シートのオンハンドをShopifyのオンハンドへ書き込み、引当はShopify側の注文処理に任せるのが安全です。
列をまたいで二重計上する
ロケーション別の列を用意しているのに、別途「合計在庫」の列も手入力していると、合計とロケーション別の数字がいつの間にか食い違います。さらにその合計をどこかのロケーションに流し込むと、同じ在庫を二重に数えることになります。合計はあくまで関数で自動計算し、入力するのは必ずロケーション別の数量だけ、と決めておきましょう。
失敗4 : 合計を同期してしまう
「全ロケーション合計100個」をどこか一つのロケーションにまとめて書き込んでしまう失敗も典型的です。Shopifyは各ロケーションの在庫をもとに注文を割り振り、出荷元を判断します。合計を一箇所に寄せると、実際には在庫がない店舗から出荷しようとしたり、近い倉庫があるのに遠い倉庫を選んでしまったりと、フルフィルメントが乱れます。
回避策は、シートをロケーション別の数量で持ち、その粒度のままShopifyへ同期することです。Sync MasterはGoogleシートを在庫の単一の真実とし、シートのロケーション別オンハンドを各Shopifyロケーションへそのまま書き込めるので、合計をどこかに寄せる必要がありません。粒度を保ったまま流すのが、結局いちばん事故が少ない方法です。
失敗5 : 古いロケーションIDや設定を放置する
倉庫の移転や店舗の入れ替えでロケーションを作り直したのに、古いロケーションへの対応づけが残っていると、同期は「もう使っていない場所」へ書き込み続けます。画面上は成功しているように見えて、実店舗の在庫はいつまでも更新されません。ロケーションを増減したときは、対応表とスケジュール設定を必ず見直してください。
- 01ロケーションを追加・削除・無効化したら、列との対応表を更新する
- 02更新後にもう一度接続テストを行い、正しい場所に入るか確かめる
- 03スケジュール同期を使っている場合は、対象ロケーションが現在の構成と合っているか点検する
- 04使わなくなったロケーション向けの列は、混乱を避けるため早めに整理する
マルチロケーションの同期は、一つひとつの失敗を見ると単純ですが、重なると原因が見えにくくなります。書き込み先・在庫保有・状態の区別・粒度・IDの鮮度——この五点を押さえ、変更のたびに接続テストで確かめる習慣をつければ、欠品とオーバーセルの大半は未然に防げます。まずは思い当たる項目から、一つずつチェックしてみてください。