夏のサンダル、冬のコート、クリスマス向けのギフト、お花見シーズンの限定スイーツ——シーズン商品の在庫管理は、通年商品と同じやり方では上手くいきません。動きが時期ごとにガラッと変わるからです。立ち上がりの頃はゆっくりだったのに、ピークになると数時間で完売、シーズン終盤は値下げしても動かない——こうした「波」をどう乗りこなすかが、シーズン商品担当の腕の見せどころです。
今回は、シーズン商品を「立ち上がり期」「ピーク期」「残り期」の3フェーズに分けて、それぞれでシートをどう運用するか、Shopifyへの同期スケジュールをどう調整するかをお話しします。フェーズ分けで考えると、意外と運用は整理できます。
シーズン商品の在庫が難しい理由
シーズン商品が難しいのは、需要予測の精度を高くしにくいからです。通年商品なら過去のデータから「だいたい月にこれくらい売れる」という感覚が育ちます。でもシーズン商品は、年に一度しか動かないので、サンプルサイズが少ない。気候、トレンド、競合の動きによって、毎年売れ方が変わります。
もう一つの難しさが、補充のリードタイムです。シーズン中に追加発注をかけたくても、仕入先側の生産が終わっていて入手できない、ということがよくあります。だから、シーズン開始前に「読んで仕入れる」必要があり、その読みが外れた時の影響が大きいのです。
そして、フェーズごとに正しい打ち手が違う、というのもポイントです。立ち上がり期に値下げするのは早すぎますし、残り期に強気の在庫表示をしてもオーバーセルのリスクが上がります。フェーズに応じて、シートでの管理方法も同期の頻度も、変えていく必要があるのです。
3つのフェーズ
シーズン商品の動きは、おおまかに3つのフェーズに分けられます。商品によってフェーズの長さは変わりますが、考え方の枠組みは共通です。
立ち上がり期
シーズン開始の2〜4週間前から、徐々に動き始める時期です。先取り好きな層、ギフト需要、プレオーダーが中心で、まだ大量には動きません。この時期の特徴は「数字よりも品揃え」です。サイズや色のバリエーションが揃っていることが大事で、各SKUの在庫数自体は控えめでも問題ありません。
立ち上がり期にやるべきは、商品ページの整備と在庫の初期登録です。シートに全SKUを登録し、商品画像や説明文を整える。同期は1日1回でも十分間に合います。
ピーク期
ここがシーズンの主戦場です。1日に何十件、人気SKUなら何百件と注文が入ります。在庫の動きが激しく、朝に100個あったSKUが午後には10個、という展開も珍しくありません。この時期はオーバーセルのリスクが最大化するので、同期頻度を上げ、バッファも厚めに設定するのが鉄則です。
ピーク期は、シートの編集権限も絞った方がいいです。普段は3人で触っているシートでも、ピーク中は1人の専任担当に集約する。そうしないと、誰がどの数字を更新したか分からなくなり、事故の温床になります。
残り期
ピークを過ぎ、動きが落ち着いてくる時期です。残った在庫をどうさばくか、というモードに切り替わります。値下げ、セット販売、次シーズンへの繰り越し——選択肢を判断する時期です。
残り期の在庫管理で気をつけたいのが「死蔵在庫」の発生です。サイズアウトしたシーズン物は、来年まで眠らせるか、見切り処分するか、決断が必要です。シート上で「残り期フラグ」を立てて、判断対象を可視化しておくと、判断漏れを防げます。
シートでのフェーズ管理
フェーズ別の運用を実現するために、シートに一列追加するのがおすすめです。「現在のフェーズ」を表す列を作り、商品ごとに「立ち上がり」「ピーク」「残り」のいずれかを記入します。担当者がフィルタを掛ければ、ピーク期の商品だけを抽出できます。
- フェーズ列 : 立ち上がり / ピーク / 残り
- シーズン開始日列 : 各商品のシーズンスタート日
- バッファ列 : フェーズに応じて自動計算(ピーク期は2倍など)
- 値引き予定列 : 残り期の値引きスケジュール
- 繰越判定列 : 来シーズンに残すか廃棄するか
ここで便利なのが、Googleシートの関数です。シーズン開始日列と今日の日付を比較する数式を組めば、フェーズを自動で切り替えられます。例えばシーズン開始から2週間前までは「立ち上がり」、開始日からピーク終了日までは「ピーク」、それ以降は「残り」というルールを数式で表現できます。担当者が手動でフェーズを切り替える手間が省け、見落としも減ります。
同期スケジュールの組み方
フェーズが分かれば、同期スケジュールも調整できます。立ち上がり期は1日1回、ピーク期は1時間に1回、残り期は1日2回——というように、フェーズに応じた頻度を設定します。同期のたびにシステムへ負荷がかかるので、必要以上に頻度を上げる必要はありません。
ピーク期は、自動同期の頻度を上げると同時に、「重要な数値更新の後は手動で即時同期」というルールも入れておきましょう。例えば、ピーク中に大量の追加入荷があった時、次の自動同期を待たずに反映したい場面が必ず出てきます。
残り期は逆に、同期を絞った方が良い場合があります。値下げで急に動きが出た時、同期の遅れで売り越しが起きるくらいなら、定期同期を多めに維持しつつ、バッファも残しておく方が安全です。
シーズン商品は、年に一度のお祭りのようなものです。準備に時間をかけ、ピークを楽しみ、残りを丁寧にさばく——この一連の流れを「フェーズで管理する」と意識するだけで、混乱はぐっと減ります。シートとShopifyの同期も、フェーズに応じた打ち手を仕込んでおけば、来シーズンはもっと楽になるはずです。