Shopifyを使い始めた頃、管理画面で在庫を眺めていて「利用可能数」「コミット済み」「現在の在庫数」と並んでいる数字を見て、ちょっと戸惑った経験はありませんか。一見すると同じような言葉ですが、それぞれが指し示しているものは違います。そしてこの違いを曖昧にしたまま運用を進めると、後から「あれ、シートと数字が合わない」「同期したのにストア側の表示が変わらない」といったトラブルにつながりやすくなります。
この記事では、Shopifyの在庫まわりで最初に押さえておきたい言葉を、一気に整理します。難しい話は一切ありません。むしろ「言葉の意味がはっきりすると、運用が一気にラクになる」というのが今回お伝えしたい結論です。シート同期の話に進む前の、土台づくりとして読んでみてください。
「ロケーション」とは何か?
Shopifyで在庫を語るときに、まず最初に出てくる概念が「ロケーション」です。これは平たく言えば「在庫を物理的に置いてある場所」のことです。自社の倉庫、東京の店舗、大阪の店舗、外部の3PL倉庫——これらは全部、Shopify上では別々のロケーションとして登録できます。
ロケーションごとに在庫数を持てる、というのがShopifyの基本ルールです。たとえば同じSKUの商品でも、「東京倉庫に50個、大阪店舗に10個」という持ち方ができます。お客様が注文した時、どのロケーションから出荷するかは、Shopifyの設定や注文時のルーティングによって決まります。
ストアを立ち上げた直後は、ロケーションが1つしかないケースがほとんどです。そのため最初は「ロケーション=うちの倉庫」と単純に考えて構いません。ただし、店舗を増やしたり、外部倉庫を使い始めたりすると、ロケーションは複数になります。複数になった瞬間、在庫管理の難易度はぐっと上がるので、早めに頭に入れておくと安心です。
在庫数を表す3つの指標
Shopifyの在庫画面には、似たような数字がいくつも並んでいます。中でも特に間違いやすいのが、「利用可能数」「コミット済み」「現在の在庫数」の3つです。それぞれが何を意味しているかを、順番に見ていきましょう。
利用可能数 (Available)
「利用可能数」は、まさにこれから新しい注文を受けられる個数のことです。ストアフロントの商品ページで「在庫あり」と表示される時、判断のベースになっているのがこの数字です。お客様が見ているのは、本当の意味での残り個数というよりは、この「利用可能数」だと考えると正確です。
コミット済み (Committed)
「コミット済み」は、すでに注文が入って、出荷を待っている数のことです。お客様は購入を完了したけれど、まだ倉庫から出ていない——そんな状態の在庫がここに計上されます。コミット済みの個数は、棚にはまだあるけれど、もう次のお客様には販売できない、という性質を持っています。
現在の在庫数 (On hand)
「現在の在庫数」は、棚に物理的に置いてある個数の合計です。利用可能数とコミット済みを足したものが、ほぼ現在の在庫数になります(厳密には「保留中」など他のステータスも含まれる場合があります)。倉庫で棚卸しをした時に数えるのは、この「現在の在庫数」の方です。
ここがポイントなのですが、シートで在庫数を管理してShopifyへ同期する時、どの数字を更新するかは選択する必要があります。多くの同期アプリでは「現在の在庫数」を書き換える設計になっていることが多く、結果として利用可能数も再計算されます。一方、「利用可能数」を直接書き換える設計のアプリもあります。どちらが自社の運用に合うかは、棚卸しの頻度や注文の流れによって変わります。
在庫追跡をONにする意味
Shopifyでは、商品ごとに「在庫を追跡する」というスイッチがあります。これをONにしない限り、Shopifyは在庫数を管理してくれません。販売しても数字は減りませんし、同期アプリでシートから数字を書き込もうとしても反映されない、という事態が起きます。
「Shopifyに在庫を追跡してもらう」というスイッチを入れて、はじめて在庫数というフィールドが意味を持ちます。これを忘れて「同期したのに数字が動かない」と悩むケースは、初心者にとても多いトラブルの一つです。
- 在庫追跡がOFF : Shopifyは在庫数を持たない。常に「在庫あり」として販売される
- 在庫追跡がON : Shopifyが在庫数を管理。0になると「在庫切れ」として表示される
- 在庫追跡ON + 「在庫がなくても販売を続ける」設定 : 数字はマイナスにもなるが販売は止まらない
シート同期を始める前に、対象となる商品の在庫追跡が全部ONになっているかを確認しておくことを、強くおすすめします。新しく登録した商品が「追跡しない」設定のまま運用に紛れ込むと、ある日突然「この商品だけ数字が一致しない」という不思議な現象に悩まされることになります。
ここからシート同期に進むために
ロケーション、3つの在庫指標、在庫追跡のスイッチ——この3つが頭に入ったら、シート同期の話はとてもシンプルに理解できます。シートに書かれた「SKU」「ロケーション」「数量」という3点セットを、Shopifyの該当する在庫レベルに書き込んでいく——それが同期の本質です。
逆に言うと、シートの列がこの3つを正確に表現していなければ、同期はうまくいきません。SKUが間違っていれば商品が特定できませんし、ロケーションが指定されていなければどこの在庫を更新するか分かりません。数量だけあっても、それを書き込むべき「住所」が決まっていないと、Shopifyは受け付けてくれないのです。
次回の記事では、いよいよSync Masterを使った「初日の同期」の流れを順に追っていきます。インストール直後にやること、シートの準備、接続テスト、本実行、そしてログの読み方。在庫の言葉が頭に入った今なら、その流れがきっとスッと入ってくるはずです。